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脳梗塞の治療


脳神経外科部長  青木 悟

脳卒中は日本人の死因の第4位です(1位は癌、2位は心臓病、3位は老衰)。そして脳卒中は要介護となる原因の第2位です(1位は認知症)。脳卒中には、脳梗塞、くも膜下出血、脳内出血などが含まれます。今回はそんな脳卒中の中で脳梗塞について、最近の治療の変遷を中心に概説します。

脳梗塞とは脳血管が閉塞し神経細胞が壊死に陥る状態です。主に動脈硬化により脳動脈が狭窄/閉塞するアテローム血栓性脳梗塞、心房細動による心内血栓が遊離し脳血管を閉塞する心原性脳塞栓症と、加齢による細小血管の閉塞によるラクナ梗塞に大別できます。

脳梗塞では神経細胞破壊による神経脱落症状が現れます。運動神経の連絡路(錐体路)が障害されれば運動麻痺が生じ、言語中枢の障害では失語が起きます。広範囲の脳梗塞では意識レベルが低下します。通常血圧は高くなります。

2005年10月にアルテプラーゼが使用可能になり、発症から4時間半以内ならば点滴での血栓溶解療法が可能となりました。2010年以後は血栓回収療法の各種デバイスが実用化され、血管内手術で血栓回収が行われます。適応患者さんは上越地域では県立中央病院へ治療を依頼します。

脳梗塞の再発予防はリスク因子の管理と脱水予防、抗血栓薬が主体となります。アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞では抗血栓薬のうちの抗血小板薬を使用します。心原性脳塞栓症では抗凝固薬が必要です。脳動脈の高度狭窄により一過性脳虚血発作を繰り返すような場合には血行再建術も適応となります。

動脈硬化の3大危険因子は高血圧症、糖尿病、脂質異常症です。その他喫煙、塩分加療摂取、肥満、運動不足なども動脈硬化の危険因子になります。有酸素運動は3大危険因子全てに良い影響を与えるので、患者さんには積極的に運動をお勧めしています。

抗凝固薬では、2011年から順次発売された新規経口抗凝固薬は、ワーファリン使用中にしばしば見られた脳内出血の合併を激減させました。2016年にプリズバインド、2017年にケイセントラ、2022年にオンデキサと、抗凝固薬使用中に出血性合併症が起きた場合の各種中和薬が発売され、抗凝固薬の安全性が更に高まりました。

抗血小板薬では2021年にエフィエントが脳梗塞にも使用できるようになり、クロピドグレルが利きにくい人(日本人には多い)にも効果の高い再発予防ができるようになりました。
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