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高齢者てんかん


脳神経外科部長  青木 悟

てんかんの発症率は高齢者(ここでは65歳以上を指します)で増加します。そして、高齢者のてんかんは認知症と症状が似ていて、認知症と診断された患者さんの中には適切な治療で改善する人もいます。そんな高齢者てんかんについて解説します。

若い人のてんかんでは明らかな脳病変がない人が多いのに対して、高齢者のてんかんでは原因となる脳病変がある人が多いです。これを症候性てんかんと言います。原因病変としては脳卒中後の傷跡が多く30~40%を占めます。他にアルツハイマー病など神経変性疾患、頭部外傷、脳腫瘍などが原因になります。脳卒中後患者さんでは元の病気が小さくても、将来てんかん発作が起こる可能性は50~75%と言われます。

発作の症状としては、手足がガタガタと震える痙攣を伴わない非痙攣性てんかん発作が多い。短時間の意識障害を1日に何度も繰り返す場合もあります。側頭葉てんかんが全体の約7割を占めます。側頭葉てんかんでは、自動症(口をモグモグする、身振りをする)、動作の停止、自律神経症状(腹痛、嘔気・嘔吐、発汗、立毛、熱感、冷感、腹鳴、心悸亢進など)、精神症状(既視感や未視感、フラッシュバック、恐怖感など)、認知・記憶障害がおこり、発作後に朦朧として歩き回ることもあります。発作後の朦朧状態は数日続くこともあります。それで‵うちのばあちゃん、急にぼけたぞ′となるわけです。

高齢者てんかんを診断するには、まず疑うことが重要です。認知症様の症状でも症状が変動するようならば高齢者てんかんを疑った方が良いかもしれません。症状を近くで見ているご家族からの情報が何よりの頼りです。高齢者てんかんを疑ったら脳波が必要ですが、1回の脳波で異常波が見つかる確率は30~70%と高くありません。繰り返し脳波検査を行ったり、睡眠時脳波を記録したり、長時間持続ビデオ脳波モニター検査をする必要がある場合もあります。原因となる脳病変の診断にはMRIも必要です。

高齢者てんかんは抗てんかん薬の治療に反応性が良いという特徴があります。なので、認知症と診断されていた患者さんが適切な治療で治る可能性があるのです。ただし高齢者ではもともとの合併症に対する内服薬も多く、治療薬選択には注意が必要です。副作用や他薬剤との相互作用の少ない薬剤が推奨されます。高齢者では抗てんかん薬の副作用は出やすいので、少量から内服開始する方が良いと考えられています。

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