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突然起こる高齢者の骨折 ~そのとき自分は?家族は?~


整形外科医師  佐久間 杏子

今年は記録的な大雪でありましたが、無事に春を迎えることができました。整形外科の領域としては、冬は雪や凍結、体のこわばり、ウインタースポーツの影響で特に骨折が多い季節となります。しかし、暖かくなって人々の活動性が高くなる春も、実は骨折が多い季節ですので、油断はできません。

特にご高齢の方は、ちょっとした転倒や動作で骨折してしまうことが少なくありません。それは、1. 年齢とともに骨密度が低下し、骨粗鬆症が進行するから 2. 筋肉が減少し、とっさの受け身が取れなかったり、骨のクッションとなる役目を果たせなかったりするから 3. 視力やバランス感覚が低下し、そもそも転倒リスクが高いから などの理由があります。骨折の部位は、①足の付け根(大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折) ②背骨(圧迫骨折) ③手首(橈骨遠位端骨折) ④肩(上腕骨近位部骨折)が多くみられます。これらは1回の転倒で複数同時に受傷することもあります。片手が思うように使えない③、④も不便ですが、①、②はあまりの痛さに体を動かすことができず、寝たきりとなってしまうことがあります。寝たきりというのは、歩けないことが辛いのはもちろんですが、全身が一気に衰弱し、心不全や肺炎などの疾患につながることもあることから、「命にかかわる骨折」とも言われています。そのため①の場合では、基本的には高齢でも手術治療が推奨されております。

もし、自分や家族が、急に骨折したら。利き手が使えなくなったら。歩けなくなったら。入院するのか、現状の家で介護や生活が可能なのか。手術を受けるか受けないか。だれが中心となってサポートするのか。それまでどんなに元気に生活していたとしてもほんの一瞬のことで、突然に本人・家族の生活に影響を及ぼしてしまうのが、骨折の現実です。

そこで、これらを事前に想定し、日頃から準備や対策をしておくことが大事だといえます。骨密度検査を受け治療を検討したり、体力・筋力維持のトレーニングをしたりすることが有用です。介護保険や介護サービスを学んだり、ケアマネージャーと話をしたりして、家族で選択肢を共有しておくこともいいでしょう。

上越地区は高齢化がすすんでおり、高齢者の骨折を他人事ではなく、身近なこととして考えていただきたく思います。私たちは皆さんの生活に寄り添い、予防から治療まで、精一杯携わってまいります。

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