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脳卒中のリハビリテーション


脳神経外科部長  青木 悟

脳卒中、突然の麻痺、言語障害、神経が壊れているので治りません。要介護状態の原因では認知症に続いて第2位です。治らないなら仕方がない、大事にしましょう、はい安静…で良いのか?確かに安静にもメリットはあります。寝てれば倒れません。筋肉の消費エネルギーが減り生命維持のためのエネルギーが節約できる、心臓への負担も減る。

しかし、安静のデメリットはメリットよりも数段深刻です。最大筋力の20%以上の筋収縮がないと日々筋力は低下します。寝てばかりいると起き上がり時に必要な血管の収縮が無くなり、起き上がるだけで血圧が下がり意識を失います。安静期間が長くなればそれだけ起き上がれなくなります。他にも下肢静脈血栓症、褥瘡、せん妄など、様々な障害が安静により引き起こされます。特に高齢者でこの傾向が強い。

ご本人もご家族も我々医療従事者も、脳卒中患者さんを、高齢者こそ安静にしないという心構えが必要です。脳卒中患者さんでは急性期でも慢性期でも、座位・起立・運動負荷は、意識状態を改善する最良の方法と言われています。機能回復にも最善の方法であり、意識状態が悪いから安静では治療が進みません。十分な安全管理ができていれば、たとえ人工呼吸器が装着されていても立ち上がっていいんです。適切な安全管理のもと、患者さんが少し筋肉痛になるくらいの運動をすることで、残された機能が向上し、失われた日常生活動作を再獲得できる可能性が高まります。右手が動かなくなったら左手で何でもできるように勉強する、これが脳卒中のリハビリテーションです。また運動の量が増えることにより、動脈硬化による次の脳卒中の予防にもなっています。

リハビリテーション中止基準としては、コントロール不良の消化管出血、心呼吸器苦痛症状、収縮期血圧>180mmHgまたは<90mmHg、安静時心拍>100bpmまたは<40bpm、新規不整脈出現、呼吸回数<5回/分または>40回/分、気道が不安定、頭蓋内圧亢進、未治療のくも膜下出血、鎮静剤を要する興奮など多岐にわたります。認知機能低下などにより転倒リスクを回避できない場合には歩行や移動方法の制限が必要な場合もあります。

今後とも安全面に十分配慮しつつ、患者さんが少しでも自分でできることを増やしていけるよう、脳卒中リハビリテーションに携わっていきたいと考えております。

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