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認知症への取り組み


認知症看護認定看護師  村田 悦子

わが国は、総務省の人口推計によると2018年(平成30年)に65歳以上の割合が28.1%になり、4人に1人が65歳以上という世界で最も高い水準の超高齢化社会を迎えています。認知症になる割合は年齢とともに高くなりますから、団塊の世代が75歳以上となる2025年では認知症の人の割合は19%(675万人)、2060年には約25%(850万人)と推計されています。また、ある調査では認知症高齢者の割合は、一般病床15.1%、医療療養43.3%、介護療養71.0%と報告され、せん妄や軽度認知障害の高齢者も含めればその割合はさらに増加します。

日本の認知症対策は、2004年に「痴呆」から「認知症」と病名を変更し、認知症を理解する人を増やす運動を行ってきました。しかし、認知症ということで精神科病院や施設に長期入院(入所)、認知症があるというだけで一般病院での入院を拒否されるなど課題は多くありました。そこで、厚生労働省は認知症施策検討プロジェクトチームを設置し、2012年に「認知症施策5か年戦略」(オレンジプラン)を発表しました。さらに、2015年には、明確に認知症の人の権利擁護を打ち出し、いくつかの新しい施策が散りばめられた「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を発表しました。基本的な考え方は、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現をめざす」とあります。活動内容には7つの柱があり、その中のひとつに「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」があります。病気やけがで入院した認知症の人が、安全に安心して治療が継続できる取り組みが課せられています。

当院では、医師・看護師・社会福祉士・薬剤師・作業療法士・管理栄養士など多職種が認知症ケアチームを組み、高齢者や認知症の人への対応を検討しています。自分が今いるところがわからず、白い服を着た知らない人に、何をされるのかわからない不安と恐怖の中にいるのではないかなど、患者さんの視点に立ち、どのようにかかわればよいかをチームで考え、看護ケアに活かすように取り組んでいます。

認知症の人が入院されましたら、患者さんの入院前の生活情報をお聞かせください。また、普段使用している時計やタオルなど身近な物を病院へお持ちください。写真やアルバムも大歓迎です。親しい物があるだけで、不安は軽減しますのでご協力お願いします。

認知症になっても、安心して入院治療が受けられる病院づくりを心がけています。病院職員だけでは認知症ケアは十分ではありません。みなさまのご協力をお願いいたします。

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