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尿検査異常と腎臓病


内科部長  土田 陽平

皆さん、『慢性腎臓病(CKD)』という病気をご存知でしょうか?大まかにその定義を述べますと、「腎臓の機能(腎機能)が正常の約60%以下に低下している、もしくは尿中に蛋白が出ている、またはその両方が3か月以上続いている」状態です。腎機能?と思われる方もおられると思います。腎臓は我々の腰の辺り、左右にある握りこぶし大の臓器ですが、体中の細胞から血液中に出てきたゴミ(老廃物)を尿中に捨てて血液をきれいに保つ働き、尿量を調整して体内の水を必要量に保つ働きなどを担っています。CKDの際の“腎機能”は血液をきれいに保つ働きを指します。この腎臓が十分に働かなくなると、血液がきれいに保てない結果として具合が悪くなる(尿毒症と言います)、不要な水を対外に捨てられず、体内の水が過剰となって、むくむ、呼吸が苦しくなる、などの症状が出現し得ます。

体を健康に保てないほど腎機能が低下した場合は、透析療法や腎移植が必要になります。2017年末に国内で透析を受けている方の原因疾患は糖尿病による糖尿病性腎臓病が約40%で1位、慢性糸球体腎炎が約30%で2位となっています。

糖尿病性腎臓病では高血糖が長期間続いた結果、腎臓の細い血管が障害されて、腎臓が障害されます。一方、慢性糸球体腎炎は1つの腎臓の中に約100万個含まれる小構造物“糸球体”で長期間何らかの原因で炎症が続き、腎臓が障害されます。

検診や人間ドッグでは糖尿病は尿糖、血糖値、HbA1c値などで、慢性糸球体腎炎は尿蛋白、尿潜血などでその存在が確認されます。そのため尿検査異常を指摘された際はこれらの病気の可能性があります。

糖尿病性腎臓病、慢性糸球体腎炎を含む腎臓の病気で共通する特徴は「自覚症状に乏しい」ことです。そのため、検診や人間ドッグでその存在を指摘されても医療機関を受診しない、医療機関を受診しても通院を途中で止めてしまう方もいらっしゃるかと思います。しかし腎臓は再生力が高くない臓器のため、糖尿病性腎臓病や慢性糸球体腎炎などで徐々に腎機能が低下した場合、劇的にその機能を回復できる治療はなく、その時点での腎機能を保つように努めることが治療の主眼になります。そうした中でも加齢による腎機能低下は避けられませんので、治療開始時の腎機能が低い場合、それだけ将来的に腎機能が廃絶し、透析療法や腎移植を要する可能性が高くなります。

検診や人間ドッグで腎機能異常、血糖異常、検尿異常を指摘された際は(勿論、他の検査異常でもですが、)自覚症状がなくても是非、医療機関を受診するようにしましょう。

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