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血液透析を安定して行うために シャントの血管内治療


臨床研修医  笹川 香織

慢性腎不全が進行すると生命維持のため腎代替療法が必要になります。腎代替療法としては血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの方法があります。今回は血液透析を行うための、シャントの血管内治療について説明させていただきます。血液透析では腎臓に変わって血液中の不要な溶媒(K、P、尿毒症物質など)や水分を除去するため、血液を高流量で透析の器械に通し、体に戻さなくてはなりません。太い血管に太い針を刺し脱血、返血をする必要がありますが、腕には高流量の脱血が出来るほど太い静脈はなく、動脈を刺せばたくさん血は採れますが、毎回太い針で深い場所にある動脈を刺すのはリスクがあるため、透析が必要となる少し前の時期にシャント手術を行います。

シャント手術とは、腕の動脈に静脈をつないで動脈の血液が抹消の毛細血管を通る前に静脈に流れるようバイパスを作る手術です。通常静脈には毛細血管を通ってから集まってきた血液が流れるので、圧力はあまり高くありません。シャント手術をすると動脈から勢いよく血液が流れ込むので、繋いだ静脈の内圧は高くなり太さも拡張します。静脈は圧に耐えられるように壁も強くなり発達します。このようにして透析の太い針の穿刺や脱血、返血に耐えられる血管が造られます。シャントにトラブルがないよう維持することが良好な血液透析には必須となります。しかし残念ながら様々な要因でシャントの狭窄を生じてしまうことがあります。

シャントの狭窄が生じると脱血、返血がうまくいかず、効率よく透析が出来なくなったり、腕が腫れたりします。狭窄を放置すると血管が完全に閉塞し、一旦閉塞してしまうと、修復しても狭窄で修復した時よりもその後の血管の開存成績が悪いといわれています。狭窄や閉塞の治療としては、近年「経皮的血管形成術 percutaneous transluminal angioplasty(PTA)」という血管内治療が広く行われるようになりました。PTAは手術と比べ低侵襲で、血管の温存の点でメリットがあります。

PTAでは狭窄した血管にプラスチックの点滴の針のようなシースを刺し、そこからガイドワイヤーという柔らかい針金を通し、それを伝ってバルーンカテーテルを挿入します。狭窄した部位でカテーテルのバルーンを膨らませ狭くなった血管を内側から押し広げます。バルーンをしぼませても血管の内腔が広がっていれば成功です。シースやバルーンカテーテルを抜去し止血をして終了です。傷は太めの点滴をしたような針穴だけで済みます。以前はX線透視、造影剤を用いて行うことが多かったのですが、近年エコーを用いて行う施設も増え、当院でも2016年よりエコー下PTAを行っています。エコー下PTAは、X線透視下PTAと比べると被曝がなく、造影剤も不要なので造影剤アレルギーの方にも行える、細かい血管での観察に優れる、血管の3次元的な観察が可能であるといった利点があります。当院ではシャント閉塞を未然に防ぎ、一つのアクセスを長期に使用できるよう医師、看護師、臨床工学技士が連携してシャントの管理を行っています。

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