ろうさいニュース

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忘れられない出会いと「退院支援」について


地域医療連携室・退院調整看護師  山田 佐智子

「退院支援」「退院調整看護師」と聞いても、いったい何を支援してくれるの?どんなことをする看護師?と思われる方も多いと思います。当院では現在、私を含めて4人の退院調整看護師が配置されていますが、私たち自身も「自分たちは、だれの何を支援しなければならないか」と自問自答し、話し合いながら活動しています。

20年ほど前の話になりますが、私が受け持った患者様との忘れられないエピソードをご紹介します。Aさんは自動車事故で頸髄損傷となり人工呼吸器を装着し、寝たきりの状態で入院生活を送っていました。奥様は朝病院に来られ、Aさんの身の回りのお世話などしながら夕方帰宅するという毎日でした。私はその状況に何の疑問も持たず関わっていましたが、じっと天井を見つめているAさんを見て「何を考えているのだろう?このままでいいのかな?」「奥さんはどう思って毎日通って来ているのかな?」という疑問が沸き起こり、ある時、思い切ってお聞きしてみました。Aさんは大きな目をパチパチさせながら、スピーチカニューレから発せられるかすれた声で「外に出たい」しばらくすると「家に帰りたい」と言うようになり、奥様も「とっても不安だけど、家に連れて帰って家族で生活したい」とおっしゃられました。当時は今ほど在宅サービスも充実しておらず、何より自分の知識不足を痛感しながら、いったい何をどうすればこの思いを実現させることができるのかを考えていきました。病棟、外来、リハビリ、医事部門など病院全体で関わりながら、長い時間をかけて一つ一つ問題を整理し、最終的には自宅退院することができました。お二人の笑顔と「自分たちの望む生活ができます」と言う言葉は今でも忘れることができません。

患者様・ご家族の気持ちに寄り添い、どうしたら住み慣れた地域で望む生活を送ることができるのかを、知識と地域との連携を駆使し、チームとして入院から退院まで関わっていくことが「退院支援」であり、それをコーディネートしていくことが「退院調整看護師の役割」と言われています。当院では退院支援の一環として、スムーズに在宅に移行できるように訪問指導も実施しています。

Aさんとの出会いが、退院支援看護師としての自分に繋がっていると感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。










 「私達が退院調整看護師です」
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