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放射線の、リスクをうわまわる利益


放射線診断科部長  島矢 早苗

原発事故以来、拡散した放射性物質による人体への影響が心配され、今もって日常生活への支障が懸念されています。放射線を利用することによって多くの利益が得られる一方、多量に被ばくすると健康被害がでることも事実です。

放射線は1895年11月8日、ドイツの物理学者レントゲン教授によって発見されました。教授は真空の放電管から出ている光線を、それまで知られていなかった「未知のもの」という意味で、X線と名付けました。夫人の手を撮影し、人体の内部を観察できることを示しました。この発見は、瞬く間に世界中に広まり、その後機器の発達に伴い病気の診断やがんなどの治療に不可欠なものとなりました。しかし、使い方を間違えると、発がんなど人体に害をもたらすことがあることもわかってきました。

発がんのリスクを問題にするときは、どれくらいの線量を被ばくしたのか、知ることが必要です。線量計を着用したり、血液検査で白血球やリンパ球の数を、尿検査で放射性ヨウ素、セシウムの量を調べたりします。これまでの研究で発がんのリスクの増加が証明されているのは、数100ミリ・シーベルト以上の場合だけです。がんの原因は何といっても喫煙と生活習慣の偏りであり、放射線による発がんリスクは、それにくらべとても低いのです。

医療では、病気の診断と治療に必要と判断されたときに使われます。

放射線科では、可能な限り線量を抑えて撮影しています。胸部X線写真1枚では0.3ミリ・グレイ、腹部のCT検査は3.7ミリ・グレイ、がん検診では乳がん検診は0.1ミリ・グレイ、肺がん検診CTは1.5ミリ・グレイ(グレイはシーベルトとほぼ同義)程度です。がんの種類によって何年も変化しないもの、短期間で大きくなるものがあり、早期発見を保障できる検診間隔を示すのは難しいですが、放射線被ばくについて心配は不要です。

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