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内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(大腸ESD)をはじめました


消化器内科部長  前 川  智

 ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは、近年開発・発展してきた治療法で、従来は外科手術が必要であった大きな病変や内視鏡切除が困難な病変に対して、専用の電気メス(ITナイフなど)を用い、少しずつ病変を剥離していくことで、高率に病変を一括に切除することができ、高い根治が望める新しい内視鏡治療です。ESDによる内視鏡手術は、2006年4月早期胃がんを対象に、また、2008年4月には早期食道がんを対象に保険適応となり、当科でも積極的に行っています。どんな大きさの胃がん・食道がんでも、早期がんであれば一括で切除することができ、腹を切ることなく治すことができるようになりました。
 そんなESDですが、早期大腸癌に対する「大腸ESD」は、高度の技術が必要とされ、本年3月まで先進医療であったこともあり、なかなか普及していない現状です。「大腸ESD」の難易度が高い理由として、大腸壁が非常に薄いこと、大腸はひだや屈曲が多く存在することなどがあげられます。
 「大腸ESD」の適応は、内視鏡治療の適応病変のうち一括切除が必要な病変で、従来のスネアによるEMR(内視鏡的粘膜切除術)では分割となる病変と定義されています。簡単にいえば、「大腸ESD」は、早期大腸がんが疑われる大きな病変が対象になるというわけです。「大腸ESD」の対象患者さんは、当院にも数多くいますが、これまでは外科手術などを行ってきました。
 私達、消化器内科スタッフは、上越地区においても、低侵襲で有効性の高い最先端医療である「大腸ESD」が行えるように、複数の有名病院で研修し、2011年より同意を得た患者さんに限定して「大腸ESD」をはじめました。2012年4月「大腸ESD」が保険収載され、5月消化器内科が正式標榜になったことに伴い、より多くの患者さんに「大腸ESD」を行うことができるようになりました。
 当科での「大腸ESD」は、様々なナイフを適材適所で、出し惜しみすることなく、積極的に使用し、安全かつ正確に行っていきたいと思います。例えば、全周切開では、どの方向にも自在に切っていけるdualナイフを使用し、粘膜下層剥離では安全性の高いSBナイフJrを使用するというように、「大腸ESD」では1症例に数本のナイフを使用することが多いです。特に、SBナイフJrは大腸用で刃の長さが短いことが特徴で、先端2本の刃周囲全体を絶縁体で包み込み、電流は刃のみに集中させて剥離を行うナイフで、少し時間はかかりますが、非常に安全性が高く、「大腸ESD」では積極的に使用しています。
  当科ではスタッフ全員が協力して、1症例1症例を大切に、全力で取りくみ、患者さんが出来るだけ待つことなく、「大腸ESD」を受けて頂けるように努力していきたいと思います。

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