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NASH(ナッシュ)=非アルコール性脂肪肝炎


消化器内科副部長  麻植ホルム 正之

 生活習慣病の一つで、非常に注目されている肝臓の病気です。
 皆さんも身をもって実感されているかもしれませんが、最近は肥満(BMI 25以上*1)が増加して健康診断で軽度の肝障害(GPT(ALT)・GOT(AST)軽度高値)、超音波検査で脂肪肝を指摘される人が増えています。以前は、脂肪肝は可逆性(容易に元の状態に戻る)で良性疾患と考えられていたのであまり指導がなされず放置されることが多く、患者さんにも医者にも重大な病気だという認識がありませんでした。
  ところが、飲酒が原因でない脂肪肝で、肝実質に壊死・炎症・線維化が起こり、中には肝硬変、肝細胞癌に進展する例があるということがわかってきました。
 飲酒歴がないのに、肝組織所見がアルコール性肝障害に似た所見を呈する疾患のことを非アルコール性脂肪肝炎(Non alcoholic steatohepatitis=NASH)といいます。1980年にLudwigという人が提唱しましたが、しばらくは注目されませんでした。
 アメリカではC型慢性肝炎、アルコール性肝障害についで頻度の高い疾患であることが明らかにされ1998年になり、ようやくNASHの疾患概念が確立しました。アメリカでは人口の3%がNASHにかかっているといわれ、日本でも数年前から盛んに報告されるようになりました。
 その発症メカニズムは複雑で、すべてが解明されているとは言えません。肥満が原因で高インスリン血症が起こり、肝臓に中性脂肪が蓄積、肝細胞の30%以上が脂肪細胞で占められたものを脂肪肝と呼びますが、脂肪肝を基盤にその他様々な原因でフリーラジカルや活性酸素など酸化ストレスの産生が増加し肝細胞に炎症や繊維化がひき起こされNASHが発症すると考えられています。
 どのような人がNASHになるのでしょうか?アルコール摂取量が20g以下(瓶ビール1本または日本酒1合)で、肥満のある人が対象です。肥満が原因で脂肪肝になるといわれ、その約10%がNASHになるといわれています。日本人口の2%にすぎないBMI 30以上の高度肥満者でNASH症例の35%を占めるといわれていますからBMI 30以上の肥満者は特に注意が必要です。
繰り返しますが、

  1. 肥満のある人でアルコール摂取量が1日20g以下
  2. GPT(ALT)がGOT(AST)より高く半年以上、異常が続いている
  3. ウイルスなど他の肝障害の原因がない人
                            は、病院の受診をオススメします。
*1: 肥満の基準で体重(kg)÷(身長(m))2で計算し日本人の平均はBMI 22
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