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Learn to ignore ignorance.
If I am not for myself, who is for me?


病理診断科部長  川 口  誠

 Eating habit(食習慣)、そしてDiet (ダイエット、食餌療法)という言葉がある。Dietと言えば、「痩せる、美しくなる、病気治療」という一時的な響きがあり、「この Dietが良い」と言われれば、耳は傾けるが一時的である。しかしEating habit、これは重要だ。ここにはヒトの主義主張が反映される。Eating habitはその国の農・林・水産・畜産業、さらに工業の影響を受ける。文明化が重要な要素だ。ヒトが食物で成長する以上、Eating habitは生きる事であり、家族であり、郷土であり、ヒトを作った哲学であり、その国の民族そのものですらある。「あなたの Eating habitは間違っている」と言われれば、本能的に反発を感じる。なぜなら、そのヒト自身が否定されることになるからだ。
 Eating habitが、癌、老化、痴呆、種々の慢性疾患に影響する事は誰もが認める。Eating habitは重い。Eating habitを変えれば医療費節約に通ずる。「しかし!」だ。正しい Eating habitとは何か? 誰がそれを示す? WHOか、 学会か? 我々が正しいと信じる事、正しいと信じたいと願う事は、本当は正しいのか?
 人間(ヒト)は炭水化物好きである。いつからか。 100年前か、弥生時代か、2000万年前か。飢餓時に炭水化物を摂取し、脂質・グリコーゲンとして蓄えるため、“炭水化物好き”が本能としてヒトに植え付けられたとすれば、この本能は現代社会で邪魔になる可能性がある。
 文明人は、精製された砂糖、小麦、米などを摂取する機会が多い。炭水化物の摂り過ぎが慢性疾患の原因、という考え方があっても不思議はない。
 女子栄養大学出版「エネルギー早わかり」によれば、ご飯普通盛り53.8g, 食パン8枚切り一枚 21.0g, うどん・ゆで 51.8g, そば・ゆでに 78.0gの炭水化物が含まれる。
 現在、私が信じる正しいEating habitは、●「健康な成人は炭水化物摂取を1日72g以内に抑えるべきだ。」●「糖尿病・糖尿病予備軍・肥満の問題を抱える成人は、1日、脂質 60〜70g, 蛋白 40〜65gとし、炭水化物摂取は 10g 以下に抑えるべきだ。」というもの。
 「いい加減な事言うな。専門医でもないのに」、「ちゃんちゃらおかしい」、「間違いさ。健康に悪いよ」。こういう反論はある (それが感情的でなく、honesty and sincerityに基づくものでも) 。そんな反論で良いのか? 大阪で、内科医 柏井氏とこの話をした後、彼は、「アホか。そんな食餌で慢性疾患が防げるなら、医者は要らない」と言った。
 炭水化物(糖質)制限。私の勝手な思いつきではなく Life without Breadおよび Diabetes Recovery: Reversing Diabetes with the New Hippocratic Dietの2冊に従ったものだ。
 すべての医療関係者、患者の皆さん。医術も薬も大事。しかし、もっと「食」を勉強しようではありませんか。知りもしないで声高に主張すると、自己矛盾に陥るし、化けの皮がはがれて苦しい。世に参考書・文献は多いが、それぞれ内容が異なる。どれが正しい? 第6感を含め全本能総動員で捜すしかない。いずれの書物も著者は本気だ。他人を欺こうとしてないし、本人はその Eating habitを実行されているはず。しかし、誰かが言うことは残念なことに嘘だ。著者近影で本当に健康な姿かどうか必ず確かめたい(元気か、physically fit か)。真実を見抜く、これこそ生きることそのものだ。
 Learn to ignore ignorance.(相手がたとえ医師であっても、ろくに知らない奴の事は無視する姿勢を学びましょう)。 If I am not for myself, who is for me? (自分を守れるのは自分だけです) [いずれも The New Hippocratic Diet からの引用、日本語訳は川口誠]。

(以下、参考書など。同じ著者の書物は一冊のみ紹介しました。)

  1. キング・コーン 世界を作る魔法の一粒 [DVD]
  2. いのちの食べかた [DVD] ニコラウス・ゲイハルタ
  3. 雑食動物のジレンマ 上下─ある4つの食事の自然史 マイケル・ポーラン
  4. 我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。―現代病を治す糖質制限食 宮本 輝, 江部 康二
  5. エネルギー早わかり (Food & cooking data) 牧野 直子 女子栄養大学出版部
  6. 糖尿病は治せる!「低糖質食」の威力―薬なしで血糖値は良くなる 田中 瑞雄
  7. 低炭水化物ダイエット―ごはん、パン、パスタ…やめられない、やせられない人へ リチャード ヘラー, レイチェル ヘラー
  8. 米と糖尿病 日本人は炭水化物(糖質)を制限してはならない 佐藤 章夫
  9. Diabetes Recovery: Reversing Diabetes With the New Hippocratic Diet. Irving, M.D. Cohen
  10. Life Without Bread: How a Low-Carbohydrate Diet Can Save Your Life. Christian Allen
  11. わたしはこうして糖尿病患者を救っている 舘 一男
  12. 肉もお酒も楽しんで糖尿病が良くなる 牧田 善二
  13. Dr. Atkins' New Diet Revolution Low Price CD. Robert C. Atkins
  14. The Dukan Diet. Pierre Dukan
  15. 医者に頼らない! 糖尿病の新常識・糖質ゼロの食事術 かまいけ式でスローエイジング! 釜池豊秋
  16. 糖尿病は食事で防げます!お米を食べようよ!日本糖尿病対策推進会議作成パンフレット(監修:浜野久美子先生)
  17. 心療内科に行く前に食事を変えなさい 姫野 友美
  18. 医師がすすめる減インスリンダイエット 橋本 三四郎
  19. なぜあなたは食べすぎてしまうのか―低血糖症という病 矢崎 智子
  20. http://life-support.cocolog-nifty.com/
  21. コレステロール嘘とプロパガンダ. ミッシェル・ド・ロルジュリル
  22. 糖尿病は果たして不治の病だったのか―ここまで効くとは! 最新糖尿病治療薬 鈴木 吉彦
  23. 糖尿病・最初の1年 グレッチェン ベッカー
  24. 心臓病は食生活で治す C・B・エセルスティン
  25. ご飯は半分にして肉でやせる 肉食健康ダイエット 荒木裕
  26. Good Calories, Bad Calories: Fats, Carbs, and the Controversial Science of Diet and Health. Gary Taubes
  27. 糖尿病治療ガイド〈2010〉日本糖尿病学会 (編集)
  28. Lancet 2004: 364:897-99 Atkins and other low-carbohydrate diets: hoax or an effective tool for weight loss?
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