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透析療法の現況と看護の役割

透析看護認定看護師 飯 田 明 美

 透析看護認定看護師となり4年目に入りました。私が透析室勤務についたのは平成12 年ですが、その当時は治療を受ける患者様のほとんどが外来通院の方でした。しかし近年では内科だけでなく外科や整形外科などの病棟でも、入院中の透析患者様
を見かけることが多くなっています。これは透析患者数の増加や高齢化によるものと考えられますが実際のデータはどうなのか、6月に発表された統計をご紹介致します。
 日本透析医学会では、患者数をはじめとした透析療法にかかわる各種統計について、1 年ごとに「わが国の慢性透析療法の現況」としてまとめています。
それによるとわが国の2008 年末の慢性透析患者数は28 万2622 人、前年に比べ7503 人の増加でした。透析患者の数は1968 年の調査開始から増え続けており、今回発表された28 万2622 人という数字は国民451.8 人に1 人が透析療法を受けていることを示しています。患者の平均年齢は65.3 歳、透析を新たに導入した患者の平均年齢は67.2 歳で前年に比べそれぞれ0.46 歳、0.43 歳上昇しています。
 透析導入の原因となった原疾患の第1位は糖尿病性腎症で43.2%、続いて慢性糸球体腎炎(23.0%)、不明(10.6%)、腎硬化症(10.5%)という結果でした。
糖尿病から起こる糖尿病性腎症と、主に高血圧などの循環器障害から起こる腎硬化症を足すと、原疾患全体の過半数(53.7%)に達していることから、生活習慣病に由来する病気から透析導入に至った患者様が多いことがわかります。これはわが国でも世界でも一般的な傾向であり、生活習慣病対策が透析人口増加の抑制に対していかに重要かを示しています。
 また、療法別の数字では、施設で受ける血液透析は27 万3276 名、腹膜透析は9157 名、在宅での血液透析は194 名と大きな偏りがみられます。患者様の生活が多様化する中、腹膜透析や在宅血液透析、また腎移植の普及率向上が望まれています。
 このような現況の中、透析看護には@透析導入前の患者に残された腎臓の機能が維持できるよう生活指導を行う A透析療法選択時に患者自身が決定できるよう説明やアドバイスを行う B透析の導入がスムーズに行われるための導入期指導を行う C透析を受けている患者がより健康的で自分らしい生活を送ることができるよう調整を行う などの役割があります。慢性の病は患者様の人生の一部であり、どのように病に向き合い生きていくのかはそれぞれに違います。看護者は患者様個々の特性を正しく理解し、その患者様に適した指導や支援を行っていくことが必要です。

 

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