ろうさいニュース

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結核って昔の病気じゃないの?

感染管理認定看護師  上 ノ 山 智 恵

 

4月に芸人の箕輪はるか肺結核発症のニュースにより、「えっ結核ってまだある病気なの?」と思われた方は多かったと思います。明治時代から昭和20年代までの間、「国民病」と恐れられた結核は、国をあげて予防や治療に取り組み、死亡率は当時の百分の一以下にまで激減しました。しかし、現在でも日本の結核罹患率は人口10万人あたり20.6人で、10人以下となっている欧米先進国に比べまだまだ多い国の一つです。
結核を予防し、拡大を防止するためには、まず結核を知ること、そして早期発見・早期治療をすることが重要です。
結核とは、『結核菌』という細菌が引き起こす『おでき』のようなものです。結核菌は、咳やくしゃみの中の飛沫核と言われる小さな粒子の中に含まれています。飛沫核という粒子は軽いため、空気中を漂い、これを吸い込むことによって他の人が感染します(空気感染)。ちなみに、私たちが普通に会話をしている時も、目に見えないシブキが吐き出されますが、「ゴホン!」と1回咳をすると、会話の時の5分間分の大量のシブキが放出されると言います。
では、この結核菌を含んだ空気を吸い込んだ人すべてが治療を必要とするのか、と言うとそうではありません。結核の患者さんから出た結核菌を吸い込むことによって『感染』はします。しかし、結核に感染しても、健康で体力があれば、免疫機能が働いて結核菌の増殖が抑えられます。この抑え込まれた結核菌は、肺の中で冬眠状態に入りますが、栄養状態が悪かったり、体力が衰えてきたり、免疫力が低下すると暴れ出します。これが、結核の『発病』であり、治療が必要な状態です。結核に感染した人の約90%はそのままで発病することはないとされますが、約10%の人は発症してしまいます。発症しても、昔と違い内服薬の治療により治る病気です。定期的な健康診断を受けること、次のような症状が長く続く場合には、単なる長引く風邪と放置せず、診療を受けることが重要です。

  1. 2週間以上続く咳
  2. 痰がでる(痰に血が混ざる)
  3. 体がだるい
  4. 微熱が続く

 また、咳、くしゃみ、鼻汁などの呼吸器症状がある方は、周囲の人への拡散防止のためにマスクの着用をお願いします。これは、“咳エチケット”と言われ、インフルエンザの時にも拡散を防止する対策とし勧められている方針です。

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