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早期胃がんの内視鏡治療について

内科副部長  前 川  智

胃の粘膜にできた悪性腫瘍を胃がんといいます。日本では胃がんの患者数、死亡数はともに減少傾向にあるものの、死亡者数は肺がんについで第2位と依然上位を占めています。ここでは、胃がんの治療、とくに早期胃がんの内視鏡治療について述べたいと思います。
胃がんは、胃壁の内側から外側へ浸潤し、進行度によって2つに分けられます。胃壁は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜と呼ばれる5層から形成されており、がんの浸潤が粘膜下層にとどまっているものを「早期胃がん」、がんが筋層から漿膜まで浸潤したものを「進行胃がん」と呼んでいます。
進行胃がんでは外科治療、他臓器に転移した胃がんでは抗がん剤治療が必要となりますが、早期胃がんの大半は、内視鏡(胃カメラ)を用いて切除することができます。内視鏡治療では、皮膚切開および胃切除の必要がないので、患者さんの負担も少なく、胃の機能をそのまま残すことができます(内視鏡治療の翌日から食事が可能です)。
早期胃がんの内視鏡治療は、病変を含んだ周囲粘膜を鋼線のスネアでしばり焼灼切除する方法である内視鏡的粘膜切除(EMR) が従来から行われていましたが、ここ数年内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と呼ばれる新しい治療が急速に普及してきており、当科でも積極的に施行しています。EMRでは、2cm以下の小さな病変しか切除できませんでしたが、ESDは内視鏡的に電気メス(ITナイフなど)を用いて病変を切除する治療なので、どんな大きさの病変でも、早期胃がんであれば一括で切除することができます。ESDはEMRに比べ治療時間がやや長くなりますが、静脈麻酔を行いますので、痛みを感じることなく、治療は終了します。入院期間は、切除後の傷(胃潰瘍)の治療を含め、7〜10日間程度です。
ESDの登場により大きな病変でも確実に内視鏡で治すことができる時代となった訳ですが、対象となる病変はあくまで早期の胃がんであることには変わりありません。予防医学の観点から、特に症状がなくても、定期的に内視鏡検査をうけることをお勧めします。当科では、経鼻内視鏡を用いた苦痛の少ないスクリーニングの内視鏡も行っていますので、是非受けてみてください。胃がんは早期発見・早期治療が鍵です!

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