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自然気胸

呼吸器外科副部長  岩 田 輝 男

 自然気胸は、肺胞の一部が嚢胞化したもの(ブラ)や胸膜直下にできた嚢胞(ブレブ)が破れ、吸気が胸腔に漏れる事でおこります。一般的に突然の胸痛、呼吸苦、頻脈、動悸、咳などの症状が見られます。しかし、無症状や肩こりといった軽い症状を示すこともあります。風邪をひいたわけでもないのに突然ヒューヒュー、ゼーゼーすることもあり、喘息などと勘違いして放置されることもあります。背が高く痩せ型の若い (10代〜20代)男性に起こりやすい傾向にあります。嚢胞が発生する原因や破れる原因ははっきりとは判っておらず、それ故に自然気胸と呼ばれます。喫煙や運動、気圧変化(秋から冬にかけての発症が多い)などによって肺に強い負担がかかったため、または成長期で骨の急成長に肺の成長が間に合わずに肺が引き伸ばされてしまったためとも考えられていますが、いずれも確証は得られていません。
胸部X線写真で血管影を伴わない空虚な領域が認められる時は気胸が疑われます。胸部CTでは詳細に調べる事が可能で比較的小さな嚢胞まで確認できます。
初期段階では無理な姿勢や運動、無理な呼吸をしないで、安静にするのみで自然治癒を待つこともあります。しかし、中等度の気胸や再発気胸であれば、胸腔ドレナージ術による吸引が必要となります。これは胸腔内を脱気し肺が膨らみやすくするのが目的です。繰り返す自然気胸や胸腔ドレナージ後も改善しない気胸では、手術によって嚢胞の切除が行われます。現在では内視鏡を用いた手術が行われるのが一般的ですので、初期の段階であっても手術が行われる頻度が高くなっています。(場合によっては開胸する事もあります。) 再発率は自然治癒の場合約50%、胸腔鏡下手術の場合5〜10%、開胸手術の場合2〜3%と言われています。最近では空気漏れを起こすブラ、ブレブを切除した後、その部分に吸収性メッシュシートを貼り付けて補強する治療法も行われており、これにより手術後再発率が抑えられると報告されています。
閉塞性肺疾患などが基礎にある場合は難治性となることがあります。治療後もしばらくは安静を要しますが、一般的には1ヶ月程度安定状態が続けば運動も再開できます。
いずれにしろ、気胸が疑われた場合は呼吸器外科受診をおすすめ致します。

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