ろうさいニュース

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たかが水虫、されど水虫

皮膚科医師  稲  晃 市 郎

 平成20年4月に北九州の産業医科大学より赴任してきました稲(いね)と申します。今回、ろうさいニュースの原稿を依頼され、どんな表題をつけるか迷いましたが、皮膚科と言えば、やはり水虫だろうと思い、上記タイトルでお話させていただきます。
「先生、水虫を診てください」
「それでは、少しこすらせて下さい、顕微鏡で菌がいるかどうか確認しますから・・・」
 皮膚科の診察室でよく聞かれる問答です。
 まず、患者さんが皮膚科を受診する時点で水虫と診断を付けているところが面白いところだと思います。多くの方は、足が痒くなったり、少しカサカサしてくると水虫だと考えます。ただし、その約半数は水虫ではないと、ある統計では出ております。
 ですので、皮膚科医は顕微鏡で水虫菌がいるかどうかをチェックします。厳密に言えば、水虫の検査で陽性(菌が発見されること)でなければ、水虫と診断することは出来ないことになっております。
 尚、診察時に判断に迷うケースとしては、市販薬を使用しているけど、よくならないと言われる水虫です。こういったケースは、顕微鏡検査でも水虫菌を発見することは難しいことが多いです。顕微鏡検査で水虫菌が発見できなかった場合は、診断に困ります。何故なら市販薬を使用したために水虫菌が検出できない場合とそもそも水虫ではなかった場合、水虫薬自体にカブレている場合があるからです。こういった場合、私はステロイド外用剤を使用し、一旦、皮疹を落ち着かせます。1週間後、もしくは2週間後に受診してもらい、その時点で再度、水虫菌のチェックを行います。ステロイド外用剤を使用することによって、ジュクジュクした病変なども落ち着きますし、ステロイド外用剤は局所の免疫力を低下させますので、水虫菌などを元気にするため、菌が発見しやすくなるためです。
 水虫は以前は治らない病気と言われておりました。それは爪に水虫菌が残存するためだったり、痒みがなくなった時点で塗り薬を止めてしまうために生じます。現在は爪水虫などに対しての内服薬もありますので、その治癒確率は格段に上昇しました。
 水虫は、市販薬でも十分に治療できることが多いですが、足に痒みなど異常を感じたら、診断を正しくつけることが治療の第一歩だと考えますので、まずは、お気軽に皮膚科を受診されてください。
 以上で、今回のテーマについての話を終わらせていただきます。

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