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石綿関連肺疾患について

内科部長  森 山 裕 之

 石綿は線維状のいくつかの天然鉱物の総称です。しなやかで糸や布にできる、ひっぱりに強い、高熱に耐えるなど優れた物性があります。そのため、建築材料、補強材、吹き付け材、保湿剤など様々な分野に広く使われてきました。
 1970年代に石綿の発ガン性が判明して以来、日本でも1995に輸入制限、2004年に使用禁止となっています。しかしそれまでに、1970年に30万トンが輸入されたように、大量の石綿がすでに日本には存在します。また中皮腫などは、曝露後40年以上経てから発症する例もあり、現在周囲にはなくてもすでに曝露されていて、発症する危険性はあります。そのため、職業的に曝露があったと思われる方は、病院への受診をお勧めします。
 石綿関連肺疾患については、胸膜肥厚斑、悪性中皮腫、肺癌、石綿肺などがあります。胸膜肥厚斑は石綿の吸入歴の証拠となる所見で特徴的です。これのみでは特に症状もなく、他の病気が発症しないか、経過観察となります。胸部X線でもわかりますが、胸部CTのほうが、はっきりします。当院では原則として少なくても初回はCTの併用をすすめています。現在はCTを年一回、胸部X線を6ヶ月に一回行っています。
 悪性中皮腫は、その原因の80%が石綿によるものと考えられています。石綿の少量曝露でも発症します。そのため1年でも石綿の曝露歴があれば、労災補償がうけられます。ただし、早期診断が困難であること、診断そのものが、数ヶ月もかかる場合があること、有効な治療が限られていることなどあり、残念ながら根治は現在でも困難です。当院では早期に診断を確定するために、胸腔鏡を積極的に導入し、確定診断に努めています。
 肺癌は石綿により約4倍に増加すると報告されています。また喫煙により8倍、両者があわさると30倍にもなるとされています。特に、胸膜肥厚斑を認める方の喫煙は危険です。禁煙がもっとも重要な予防法です。肺癌による死亡は約6万人、このうち半数以上が喫煙と考えられています。当院では保険適応で禁煙外来を行っています。禁煙が困難と感じているかたは、受診してください。
 治療は早期発見、手術がもっとも予後良好です。放射線、化学療法は今のところ全例に有効な治療とはいえません。

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