ろうさいニュース

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PEGのお話

第5内科部長  合志 聡

 現在、口から十分に食事を摂取することのできない患者を支えるためにPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)というツールが、ものすごい勢いで全国的に普及しています。
 対象となるのは消化管の機能があり、経腸栄養(胃や腸などの消化管にチューブを通して栄養を摂取する方法)が必要な患者です。脳梗塞の後遺症により口から食物を飲み込めなくなってしまった方や、口から胃までのルートが何らかの原因で食物がうまく通過できない方の栄養補給のために行われます。以前は嚥下ができない方には経鼻胃管を入れて経腸栄養を行っていました。もしくは中心静脈栄養という高価な医療を行っていました。しかし現在の医療費削減、介護保険導入により在宅、施設、療養型病床で経過を診ることが増えてきました。それに加え、最近の栄養療法の見直しにより院内においてNST(栄養サポートチーム)が立ち上がり、退院後も地域によっては病院地域連携NSTも実践されつつあり、経腸栄養の重要さが叫ばれております。中心静脈栄養より経腸栄養であるほうが生理的であることは、異論はなく、また敗血症などのカテーテルトラブルによる合併症発生頻度も低くなり、早期退院や、離床率にも大きく影響を与えることもわかってきました。
 このような中で米国静脈経腸栄養学会では栄養投与のアルゴリズムを発表しました。そこには消化管の機能を有していれば、早期に経腸栄養を始め、嚥下が不能な場合は経鼻胃管を挿入して、その期間が4−6週以上の長期化することが予想できる場合は胃瘻、腸瘻を選択すべきというものです。胃瘻と言っても以前は開腹手術でしたが、現在は内視鏡を使用しての経皮内視鏡的手技が確立したこともあり、胃瘻すなわちPEGという状況に変わってきました。このような背景をもとにPEGは今や市民権を持つ言葉にまでなりました。
 しかし、PEGは造設するという行為で終わるのではなく、それを管理して、使いこなしていくということが使命になります。そのためにはしっかりとした管理方法の熟知が必要になりますし、苦慮する事象が起こった場合に、それに対処する方法をしっかり伝えることが大事になります。現在、これほどまでに普及しているPEGですが、それは造設が普及しているのであって、管理に関しては、それぞれの施設でそれぞれの工夫をされているのが現状かと思います。その情報を共有して、PEG管理のネットワーク構築は急務と考えられます。
 私は前任地でPEGのネットワーク作りに力を注ぎ、造設から、交換まで、そしてその期間の栄養管理(適正栄養量の決定)までを行って、PEGが正しく管理され、患者の栄養状態が改善されるように努力してきました。それによりまた経口で食べられるようになった人も何人も見てきました。食べられないからPEGではなく、食べるためのPEGということを目標に取り組んできました。
 上越に赴任し、これまでの経験を生かし、この地区のPEGネットワーク作りに微力ながら貢献できるよう励んでいきたいと考えております。脳神経外科、耳鼻咽喉科、そして高齢者を抱えている主治医の先生方は適応の患者がおりましたら、ぜひ当科に御紹介ください。また地域病院の主治医の先生で、経鼻胃管で1ヶ月以上を越える患者を抱えている方はぜひ、当科に患者家族を受診させてください。2週間程度の入院で造設は可能です。家族には簡単なPEGの適応がある旨を説明して頂ければ、詳しい説明は当科で行います。
 PEGの依頼を受けるのは木曜日正午よりPEG専門外来を開いておりますので、そちらにお願いします。皆様からの御依頼を待っております。

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