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DPCについて

病院長   酒井 邦夫

 当院は平成17年度のDPC調査事業に参加し、急性期病院としての基準ならびにデータ作成能力等の基準を満たしていると判定され、その結果18年度からDPCが適用されることになりました。新潟県内では、特定機能病院である新潟大学医歯学総合病院以外では、当院と済生会新潟第二病院が最初のDPC適用病院となります。しかしDPCという言葉そのものが医療関係者以外にはまだ余り知られていないように思われますので、ここではDPCとは何かについてその概要を紹介させていただき、ご理解を得たいと思います。

1.DPCとは
 DPC(Diagnosis Procedure Combinationの略)は、新たに開発されたわが国独自の診断群分類のことです。患者さんごとに病名、年齢、意識障害レベル、手術・処置の有無、副傷病名の有無など、診断名と処置を組み合わせた14桁の数値で構成されます。DPCは本来、病院間の医療の質を相対的に評価するために開発されたものですが、「医療資源の投入量の均質性」という観点から診断群が分類されているために、厚生労働省はこれを診療報酬包括支払制度の支払単位として活用することにしました。
 平成14年度には、DPCによる包括支払方式が特定機能病院(高度の医療を提供するとともに高度な医療に関する研究・開発・評価・研修などを行う機能を有する医療機関。大学病院など82の医療機関が指定されています)に導入され、翌年には一般病院にも拡大され、高度医療を提供する急性期病院における支払方式として一般化しつつあります。このため、DPCは本来は診断群分類方法の一つなのですが、現在では診療報酬支払方式のことを含めて、一括して「DPC」と呼ばれることが多くなっています。

 

2.DPCの意義
 最近は国民の医療を見る目が厳しくなり、医療活動の内容に関する標準的な情報の整備とその公開が強く求められるようになりました。DPCは、一言でいえば、国民のこのような要求に応えるためのツールであり、医療情報の標準化と透明化を促進することを通して、患者さんの医療サービスの選択に役立てるところに本来の目的があります。
 DPCの開発者である松田晋哉教授(産業医科大学)は、DPCには臨床的均質性と医療資源の均質性という二つの要素があり、臨床的均質性に着目すれば医療の質を向上させるためのツールになり、医療資源の均質性に着目すればコスト分析などによって病院経営のマネジメント能力向上のツールとなる、と述べております(松田晋哉:基礎から読み解くDPC−正しい理解と実践のために−、医学書院、2005年)。医療の質評価の面では、DPCのデータから病院医療の質を判断する目安となる臨床指標(治療成績、合併症発生率など)の作成が可能になります。また経営面では、診断群分類ごとの収支を他の病院と比較(ベンチマーク)できることから、それをもとにして経営改善のための行動をとることが可能になります。

3.当院における取り組みの経緯
 平成16年9月、「DPC調査事業に参加するかどうか、院内的に検討するように」という機構本部からの指示があり、病院長を委員長とする「DPC企画委員会」を早速に立ち上げました。短期間ではありますが集中的に審議した結果、病歴管理体制などに若干の問題点があるものの改善は可能なこと、看護体制(現状2.5対1)も18年度以降にDPC病院の基準である2:1とすることは可能なことから、調査事業に参加することを決定しました。厚生労働省では、DPC調査病院を拡大するかどうかでその後もなお議論がありましたが、最終的に17年6月15日の中央社会保険医療協議会において拡大することに決定し、同年6月24日付けで当院もDPC調査協力病院に指定されました。
 DPCに参加するためには、様式1の入力において医師の協力を得る必要がありますが、医師は本来患者さんのために最高の医療を提供することに専念すべきであり、余分な負担は極力避ける必要があります。このためには病歴管理体制を強化することが必須条件になります。当院では、DPC開発者の松田教授をお招きして講演会を開催し、DPCに対する職員の理解を深めるとともに、病歴管理体制の整備に力を入れました。また当院のレセプトデータを基に出来高との比較を試みたところ、診療科によって凹凸はあるものの、病院全体としては若干の収入改善が期待できるという試算結果の得られたことも、DPCへの推進力となりました。
 平成17年7月から4ヶ月間にわたる調査協力の結果、データ作成能力が基準を満たしていると判定され、18年度からDPCが適用されることになりました。全国の32労災病院の中では、9の労災病院が18年度からスタートの予定です。

4.今後の課題
 DPCは現在、支払方法としての議論が中心になっていますが、その点についても分類の精緻化や包括範囲の見直しなど、まだ多くの課題が残されているようです。院内的には、医師の負荷を軽減するための対策を更に推進する必要があると考えております。またDPC本来の目的である、医療の質評価のためのツールとしての活用、そして病院マネジメントのツールとしての活用についてはまだ緒についたところであり、今後の研究開発が待たれるところです。

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