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内視鏡下副鼻腔手術について

耳鼻咽喉科副部長   岡坂健司

    やっと花粉症の季節が過ぎてほっとしているといった方が多いのではないでしょうか?今年のスギ花粉の飛散量は予想通り例年以上で、外来を受診される患者様も多かったようです。さて花粉症と同じように鼻水がたくさん出てくる病気には、副鼻腔炎があります。一昔前までの子供はよく青ばなを垂らして、袖で拭うという光景をよく見かけました。この青ばなが副鼻腔炎(蓄膿症)の特徴的な症状です。これが慢性化すると副鼻腔の粘膜が腫脹して鼻茸となり鼻づまりの原因となったり、薬を飲んでもすぐには治りにくくなります。最近では青ばなを垂らしている子供をほとんど見かけなくなったように副鼻腔炎も早期に治療してひどくならずに済む場合が多いのですが、中途半端に治療をやめてしまうと自覚がないうちに蓄膿症になっている時があります。(ちょっとした風邪をひいたら粘稠な鼻汁が続くというのは気付かぬうちに蓄膿症になっているかもしれません。)この場合でもマクロライド系抗生剤の少量長期療法という方法で2〜3ヶ月治療を続けると治ることがありますが、なかには改善せず手術が必要ということもあります。

 手術の方法として10数年前までは上口唇の歯茎への移行部を切って上顎洞の骨をノミで削る方法が主流でしたが、最近は鼻腔内からだけのアプローチで行う内視鏡手術が主流となってきました。この方法はカメラを付けた内視鏡といろいろな鉗子を使い、本来ある鼻腔と副鼻腔をつなぐ自然孔を大きく切り開き、その穴から腫脹した粘膜を切り取ります。すぐ近くに眼や脳がありますので、当然そこに障害を与えないように細心の注意を払いますが、病変を大きく拡大して切除できるため比較的安全に手術を行える上に、術後の痛みが昔の手術と比べ格段に減少されるという利点があります。また手術中の操作はテレビ画面で見ながら行うためすべての操作をビデオに録画し、御本人にお見せできるといった患者様が手術の内容を把握するのにも役に立ちます。
 手術自体は通常全身麻酔で行いますが、もし鼻中隔弯曲や下鼻甲介の腫脹があれば同時に治療することができ、退院時には鼻の通りもよく、鼻汁の少ない状態で帰っていただくことができ、なおかつ外に見える傷はできません。
 この手術は副鼻腔炎の他にもアレルギー性鼻炎や眼窩ふきぬけ骨折や術後性上顎嚢胞等の鼻を扱う手術に応用されてきています。

 実際は手術に至らずに済むように、粘稠な鼻汁が出て1週間も続くようなら、近くの耳鼻科で診察を受けてその先生が“もう治ったよ“というまで治療を続けるのが一番安価で、痛みも少なく、確実だと思います。耳鼻科の診察は子供が泣き叫び恐ろしいだとか、痛いから嫌だとかという意見をよく耳にしますが耳鼻科医は皆なるべく痛みなく、怖がらせず治療をする努力をしていますので症状が続くときは早めに受診されたほうが良いかと思います。
 ちなみに鼻血が出たとき、皆さんはどんな風に対処していますか?ティッシュを詰めますか?安静に寝ていますか?首を伸ばして後頚部を叩いていますか?どれも×です。

通常、基礎疾患が無い場合、大部分は鼻中隔の前方にあるキーゼルバッハ部位から出血しています。これを効率よく止血するには何も鼻に入れず、鼻翼(小鼻の柔らかいところ)を親指と人差し指で5分間強く押さえておくと止血します。これで止血しないときはさらに10分間押さえながら鼻の周りを氷の袋で冷やしてください。これでも止血しない時は耳鼻科に直行してください。これは大人も子供も一緒ですので、もしもの時は試してみてください。

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