ろうさいニュース

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第1号掲載(2002年8月)
夏に流行る子供の病気
新潟労災病院小児科
内山徹

 じめじめした梅雨も終わり、喘息も落ち着きを取り戻し(一番発作がおきやすいのは秋ではありますが)ほっとしたのもつかの間、子供たちにとって待ちに待った夏休みが始まります。
 しかし、“夏風邪”という言葉があるように、夏でも小児に流行するいくつかの感染症が知られています。ここでは、突然子供が高い熱を出しても慌てないよう、代表的な疾患について対処方法も含めて説明します。
 感染症はウイルス性と細菌性に分けられ治療方法も異なりますがいずれも飛沫や接触によって感染するため、集団で生活する場で広がりやすくなります。

<ウイルス感染症>
まずはウイルス感染について説明します。

(1) 咽頭結膜熱は夏にプールを介して流行するため、「プール熱」とも呼ばれています。39〜40℃の高熱が続きます(4〜5日)。のどの痛み、目の充血を認め、ひどい場合には頭痛や腹部症状(吐き気や下痢、腹痛)を伴うことがあります。
(2) ヘルパンギーナは口の中で上あごの奥に水疱が出現し、39〜40度の高熱が続きます(2〜3日)。のどの水泡が破れて潰瘍になると、痛みから水分を受け付けず、脱水になる場合もあります。
(3) 手足口病は、文字どおり手のひらや足の裏、口の中に水疱ができる病気です。小さい子はおしりにもできることがあります。熱は出ないか、微熱程度のことが多いのですが、口の中の病変がひどい場合は高熱が出やすく、また口の痛みから食べられなくなることがあります。
(4) 急激な頭痛、発熱、嘔吐がみられたら、髄膜炎の可能性があります。脳や脊髄の表面の膜に炎症が起こる病気で、腰から髄液を採取して確定します。入院治療が必要です。前述のウイルス感染の合併症として起こることがあり注意が必要です。
(5) 伝染性軟属腫(水いぼ)もウイルス感染症です。接触感染であり、夏は皮膚の露出も多くなるため感染しやすくなります。数が少ない場合は経過観察のみで消失しますが、多い場合は摘除の必要もあるので小児科や皮膚科に相談してください。
ウイルス感染症は、一部を除いて特効薬はなく対症療法(熱やのど、口の痛みを抑えるお薬)が中心となります。よって基本的には抗生物質(細菌を抑えるお薬)の投与は必要ありませんが、実際には細菌感染症を完全に否定できない場合もあり、抗生物質を投与する場合もあります。
   
<細菌感染症>
 夏にみられる細菌感染について説明します。
(1) 夏は細菌による急性腸炎が多くみられます。病原性大腸菌やサルモネラ、カンピロバクタ−などが原因となります。腹痛、下痢、血便、嘔吐、発熱などの症状が見られます。便の細菌検査を行い、抗生剤や整腸剤の内服をします。いわゆる“下痢止め”は腸管の動きを抑え、菌の排出を遅らせてしまい、かえって治り難くなるため小児では使用しません。接触感染するため、手洗いをしっかりとしましょう。
(2) 伝染性膿痂疹(とびひ)はブドウ球菌によって起こります。皮膚が発赤し、ジュクジュクしてきます。病変部に触れるとそこから広がってきます。抗生物質の内服と抗生物質を含んだ軟膏により治癒します。
   
<家庭で>
 一般に特別な場合(髄膜炎など)を除いては入院が必要となることはあまりありません。
 上述のような症状を見つけた場合、どのように対処したらよいでしょうか。
(1) まずは早めの受診を:なにごとも早めの治療が重症化を防ぐ一番の方法です。
(2) 安静:基本です。
(3) 十分な水分を:食欲はなくてあたりまえです。無理に食べさせると、弱った腸管をよけいにいじめることになり、また吐いたりすることで脱水が進んでしまいます。水分を十分に取ることで脱水さえ予防していれば大丈夫です。
(4) 水分が取れずぐったりしている場合、高熱が3日以上続いている場合は小児科を受診するようにしましょう。
(5) もし夜間に発熱があった場合:水分が摂取できていれば、緊急性はありません。翌日小児科を受診しましょう。水分が摂取できず、ぐったりとしているときは、脱水があり入院が必要な場合がありますので、 当院の救急外来までご連絡ください。
(6) 熱性痙攀の既往があるお子さんはその予防も忘れずに。
 元気な子供たちにとって、夏はキャンプやプール、クラブ活動と、とても忙しい季節です。病気になっている時間なんてないことでしょう。そのためにも、病気になった時は適切な対処で早めの治癒を心がけましょう。
 今回説明した病気やそれ以外のことについて、ご質問やご相談があれば気軽にご連絡ください。


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